・国内初のナショナルジオパーク認定の糸魚川の魅力
「縄文時間」は、新潟県糸魚川市のヒスイ工房「ぬなかわヒスイ工房」が運営しています。
糸魚川市は国内初のナショナルジオパークに認定された、フォッサマグナの街です。
フォッサマグナとは、日本列島を地質構造的に東西に分断する断層のことで、「糸魚川・静岡構造線」とも呼ばれていますが、その恩恵により糸魚川には海あり山ありの豊かな自然環境と鉱物資源に恵まれているのです。
例えば糸魚川には、国内唯一の宝石質のヒスイを代表として、石灰石や多種多様な鉱物が産出します。
また標高3000m級の北アルプスから急激に海に落ち込む地勢は、山菜の宝庫である山々と美味い近海魚が採れる海を同時に持っているので、糸魚川には美味い食い物が多いのです。
この写真は長野県に接する山間部の小滝区の明星山。
明星山は石灰石の塊りだそうで、麓には有名なヒスイ峡があります。
全国からクライマーが訪れるロッククライミングの名所でもあります。
そして3000m級の登山を楽しんだ後に海水浴が日帰りで楽しめ、スノボの後に波乗りができるアウトドア天国なのです。
この写真は筒石区の今は使われていない漁港で、私の好きな場所のひとつ。
遠浅の海はあくまで透明で、水中は岩と海藻、魚で一杯の竜宮城のような風景が広がっていますので、素潜りには絶好の場所です。
海に潜ると、海面に緑の山が写って我を忘れてしまいます。 ここは山が海にせりだす糸魚川特有の地勢のお手本のような場所。
・私のお国自慢は、カッコいいご先祖様
しかし私にとってのお国自慢は、豊かな自然環境以上にその豊かな地質的地域特性を活かして生きてきた縄文時代から古墳時代まで隆盛を誇ったヒスイ文化を担ったご先祖様達です。
つまりは「糸魚川特有のヒトの歴史」です。
高度6もある硬いヒスイを世界で最初に加工したのは、糸魚川市街を見下ろす丘に住んだ長者ケ原遺跡の縄文人です。
そして勾玉の原型を造ったのも、糸魚川の縄文人という説もあります。
また彼らは、そのヒスイを加工するばかりでなく、国内各地に運んでいました。
縄文期に限定すれば、糸魚川ヒスイは北は北海道の礼文島、南は沖縄本島の糸満市まで運搬されているので、当時は丸木舟による海上交通が発達していたと推測されています。
今風にいえば我らがご先祖様は、地場産業を起業して日本海を縦横無尽に航海する海の男だったのです!その知恵、そのバイタリティーって実にカッコよくて私のお国自慢。
五千年前に丸木舟に乗って青森までヒスイを運んだとされる糸魚川の縄文人。
私はUターン帰郷後に、その偉業を顕彰・検証する目的で「日本海縄文カヌープロジェクト」を結成しましたが、結成3年目にして初めての長距離航海実験である糸魚川〜上越間の航海を2013年5月25日に成功することができました。
写真は上越に向かって航海する「明星丸」・・・格好いいでしょ?
詳細は「日本海縄文カヌープロジェクト」のカテゴリーと私のブログ「縄文人(見習い)の糸魚川発!」をご覧ください。
・オラとこの縄文時間で遊んでいきないっちゃ!
このように糸魚川は多くの魅力に溢れていますが、残念ながら地元の人は「糸魚川には仕事も遊ぶところもな〜んも無いっ!」って自嘲気味です。
ところがどっこい、糸魚川には面白い魅力が沢山あるのです。
「縄文時間」は、そんな糸魚川の魅力を発信したいという想いから開設しました。
クニという概念の無かった縄文時代は、クニのために殺すことも殺されることもなく、土地を所有するという概念のない、おおらかな時代だったと思います。
陽の高さや月の満ち欠けで時を知り、流れる雲や星々を眺め、竪穴住居の炉の踊る炎を観て愉しんだ縄文人の暮らし。
写真はラオスの少数民族の村。 テレビがなくても焚火があれば人が集まり、話に華が咲きます。
縄文人もこんな生活を送っていたと思うのです。
どうです?愉しそうじゃありませんか?
人間の決めた約束事を忘れて、自然の理に沿って我を忘れて遊ぶことを、「縄文時間」と私は呼んでいます。
この言葉は東京都渋谷区にあるNPO法人シブヤ大学で、縄文土器体験会の講師に招かれた時にシブヤ大学の担当者が考えたキャッチコピーですが、気に入ったので以後は私も使わせていただいています。
石器や縄文土器を作る時、自然農法をする時、無論、本業の勾玉作りをする時は、「縄文時間」に身を任せて時の流れを忘れます。
「しばらくオラとこの『縄文時間』で遊んでいきないっちゃ!」
参考文献:
縄文生活図鑑・縄文人になる(関根秀樹)・古代ヌナカワを探る(鈴木景二)・ヌナカワ伝承とヒスイ 文化(寺村光晴)・古代越後 奴奈川姫伝説の謎(渡辺義一郎)翠の古代史・奴奈川姫・奴奈川姫とヒスイ文化(土田孝雄)・古代翡翠道の謎(森浩一編)・青い森の縄文人とその社会・石笛(守山鷲声)・縄文人の道具(小林達雄編)・長者ケ原遺跡(木島勉他)・原始技術史入門・セルフメイドの世界(岩城正夫) 日本の美術2・3・4・5 その他 |